紅の夢/くれないのゆめ:来歴や特徴と産地や旬

●紅の夢とは
◆果肉も紅いりんご
「紅の夢」は国立大学法人弘前大学が育成研究をする中で偶然生まれた皮だけでなく果肉も紅いりんごです。 当時、新品種の育成研究として「紅玉」に「スターキングデリシャス」を交配し育成したところ、スターキングの系統らしからぬ果肉が赤い果実が成ったため、DNA検査などを行ったところ花粉親は「スターキングデリシャス」ではないことが判明し、園内に植えられていた別の樹の花粉と自然交雑したと考えられます。この別の樹とは、本来「エターズゴールド」という黄色いりんごがなるはずが、接ぎ木されていたであろう「エターズゴールド」ではなく、その台木として使われたものが育ったと思われる赤皮赤肉のりんごが成り、この花粉と「紅玉」が交雑したものだろうと推察されています。

2008(平成20)年に登録出願、2010(平成22)年に品種登録されています。
赤肉系のリンゴは見た目が面白く希少性もあって飲食店やスイーツ店などから注目されるようになってきました。長野県からも近年「いろどり」「ムーンルージュ」「なかの真紅」「炎舞(えんぶ)」、さらに「なかののきらめき」「冬彩華(とうさいか)」が品種登録されています。
◆紅の夢の特徴
「紅の夢」の果実は300~400g程の少し大きめのリンゴで形は丸く、果皮の色は全体に濃い目の紅色で、果点は小さくまばらにしかありません。
最大の特徴は、断面を見ると分かりますが、果肉まで赤みが入っていること。これはリンゴの皮に含まれている色素成分と同じアントシアニンによるもので、果肉は緻密でやや硬く、甘味は普通にあるが酸味が強く、コンポートや焼きリンゴ、タルトなど加熱調理にも向いている。

農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『---- 果実の大きさは大、果皮の地色は黄緑、果皮を被う色は紫紅、果皮を被う色の量は多、果皮を被う色の型は少、さびの位置はこうあ、さびの量は少、さび状果点は無、果点の大きさは小、果点の密度は低、スカーフスキンは極少、果皮のろう質は中、果皮の粗滑の程度は滑、果梗の長さは長、果梗の太さは中、肉こうの有無は無、果心の形は平円、果心の大きさは中、果肉の色は帯赤色、果肉の褐変化は弱、果肉の硬さは中、肉質は密、蜜の多少は極少、甘味は中、酸味は強、渋味は極弱、香気は中、果汁の多少は中 ----』以上、抜粋。
◆実際に食べてみた紅の夢の食味

今回入手したのは12月下旬なので、収穫されてから1か月以上は立っていると思われるものでした。
外見的には色が濃く、表面のろう質艶が多めでテカテカに艶があり、よく見ると表皮に縦に1~2本の筋がまるでプラスチック製品の継ぎ目のように付いているので作り物のりんごの様でした。

果肉の色はご覧の通り赤く、とても印象的なリンゴで、食べてみると果肉はしっかりとした歯ごたえがあり、そこそこ甘味があるにもかかわらず酸っぱく感じるほど酸味がありました。個人的には酸味がある方が好きなので好印象。また、酸味と共に、少し渋みも感じられます。りんごの香りはあまり感じられませんでした。
このリンゴの食べ方として加熱調理や赤い色のついたジュースなどが弘前大学の「紅の夢」公式ホームページに紹介されていますが、やはり生のカットものを果肉の断面が見える形でトッピングなどに使うのが視覚的にはいいかもしれません。切ってからの変色もあまりなく、綺麗な断面が長持ちします。
●紅の夢の主な産地と旬
◆主な産地と生産量
主な産地は青森県です。2017年現在まだ生産量は非常に少なく、一般市場にはごくわずかしか出回っていません。見た目の特徴や調理にも使いやすい品種であり、苗木はどこでも取り寄せることができるようなので、他のリンゴ産地でも栽培に取り組む農園が出てくると思われます。
◆紅の夢収穫時期と旬
紅の夢は青森県で10月中旬頃から11月上旬までで、普通冷蔵で3か月ほどの貯蔵が可能とされています。ただ、数が少ないので出回る期間は非常に短いでしょう。

品種 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | ||||||||
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紅の夢 |