スタールビー:来歴や特徴と食味
●スタールビーとは
スタールビーは北海道農業試験場がドイツの赤皮品種「Kastor」の改良系統同士を交配し育成した赤皮黄肉でジャガイモシストセンチュウ抵抗性を有する調理向きのジャガイモ品種です。
◆スタールビーの来歴
「スタールビー」は北海道農業試験場(現、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター)において1991(平成3)年に「北海77号(「Kastor」×「R392-50」)」に「87028-6(「Kastor」×「81025-1」)」を交配し、得られた実生から選抜育成された果皮が赤く黄肉のジャガイモ品種です。
交配親に使われた「北海77号」、「87028-6」はともにドイツ(旧東ドイツ)で育成された赤皮品種「Kastor(カペラ×バルティック)」をもとに日本の環境に最適化しジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持たせた系統同士です。
2003(平成15)年 種苗法に基づく登録出願。
2004(平成16)年 出願公表するとともに、「ばれいしょ農林49号」として農林登録。
2006(平成18)年 品種登録完了。
1991年の交配から2002年まで育成機関は12年間に及んでいます。
「スタールビー」という名称は、本種の特徴である赤い皮色と育成地である北海道の美しく星がきらめく雄大な夜空を宝石の”スタールビー”に見立ててつけられたそうです。
◆スタールビーの特徴
スタールビーの特徴は以下の通りです。
●イモの形はわずかに縦長で扁平な扁球形で、「男爵薯」より目が浅い。
●皮色が赤く、目も赤い。
●これまでの赤皮品種「アンデスレッド」や「レッドムーン」よりイモの休眠期間が約40日長く、「男爵薯」並み。
●ジャガイモシストセンチュウ抵抗性ですが中心空洞が「男爵薯」より発生しやすい。
●肉色は黄色く、肉質は「男爵薯」並みのやや粉質で、でん粉価は1~2%程度高く、煮崩れ具合も「男爵薯」並み。
●調理後の黒変は比較的少なく「男爵薯」と異なり、フライ適性があります。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
いもの長短はやや長、扁平度はやや強、形は扁球形、
皮色は赤、目の深浅はやや浅、肉色は黄、
休眠期間はやや長、枯ちょう期は中、早期肥大性はやや遅、
上いも重は少、上いも数は中、上いも平均1個重は小、
肉質はやや粉、
葉巻病抵抗性は弱、Yモザイク病抵抗性及び疫病圃場抵抗性は弱、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性推定遺伝子型はH1である。
「男爵薯」と比較して、皮色が赤であること、肉色が黄であること、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性推定遺伝子型がH1であること等で、「ベニアカリ」と比較して、叢生が直立していること、いもの形が扁球形であること、肉色が黄であること等で区別性が認められる。
-----』以上、抜粋。
●スタールビーの食味や適した料理
スタールビーは「男爵薯」よりも肉色が黄色いですが、肉質は似ていてやや粉質で煮崩れ具合も「男爵薯」並みとなっています。また食味の良さも男爵並みとなっています。水煮にした時の黒変はしにくいので、ポテトサラダ等にもお勧めです。
揚げ物もポテトフライには向いていますが、チップ適性はないようです。
◆皮ごと蒸したものと皮を剥いて茹でたもの
実際にスタールビーを皮を剥いて水煮にしたものと、皮付きのまま丸ごと蒸しあげたものを試してみました。左の2個が水煮で、右が蒸してから半分に切ったものです。
他の複数品種と同じ鍋で一緒に調理してみたところ、水煮の煮崩れ具合は表面が少しはがれるような感じで少し崩れました。
蒸した方は皮に少し裂け目ができる感じですが、大きくははがれていません。半分に切って指で押しつぶしてみると男爵薯と同じような崩れ方で、ジャガバターに向いている感じです。
食感もややホクホクした感じで男爵薯に似ています。
◆スタールビーのポテトチップ
< 出 典 >
※ 「登録番号14040号 スタールビー」農林水産省品種登録データベース
※ 「ばれいしょ農林49号」農林水産省 農林認定品種データベース
※ 「赤皮黄肉ばれいしょ新品種候補系統「北海86号」」農研機構 研究成果情報 2002年
※ 「Kastor」THE EUROPEAN CULTIVATED POTATO DATABASE
※ 「スタールビー」日本いも類研究会