●とちひめとは

◆とちひめの来歴

 「とちひめ」は栃木県農業試験場が大果で食味の良い「栃の峰」と大果で収量の良い「久留米 49 号」を交配して育成した、大果・多収で食味がよく、収穫の連続性に優れ、促成栽培に適応した観光農園向けいちご品種です。育成の過程は下記のとおりです。

1990(平成2)年 「栃の峰(「系511」×「女峰」)」に「久留米 49 号(「女峰」×「とよのか」)」を交配。得られた実生194株の中から「90-13-3」を選抜。

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1991(平成3)年 系統選抜試験実施

1992(平成4)年 特性検定予備試験実施。

1993(平成5)年 系統名を「栃木 13 号」とし系統適応性試験実施、及び現地での栽培適応性検討。

1997(平成9)年 いちご狩り、産地直売用として試験栽培実施。

1998(平成10)年 「栃木 13 号」として種苗法に基づく品種登録出願。品種名を「とちひめ」と命名。

2001(平成13)年 品種登録された。 

 「とちひめ」という名称は「とちおとめ」の姉妹のイメージと姿・形の美しさを表現。また、観光いちご地域限定の「土地」と栃木県の 「栃」をかけている親しみやさに因んでいるそうです。

 「とちひめ」は大果で多収・そして食味が良いイチゴなのですが、果皮・肉ともに柔らかいため市場への出荷にはむかず、いちご狩りや直売所での販売向けの品種となっており、産地でないと食べられないイチゴとなっています。

◆とちひめの特徴

 「とちひめ」は「とちおとめ」よりやや大きい傾向があり、形は円錐形で粒ぞろいがよく、果皮の色は光沢のある濃赤色。

 果肉は果心とともに鮮紅色で、糖度は「女峰」と同じくらいとあまり高くはありませんが酸味がやや少なく多汁で食味が良いのが特徴となっています。

 栽培においては、花房の発生が良く、連続的に収穫ができ、収量性は高く安定しています。促成栽培での4月末までの収量は株当たり600g以上だそうです。

 ただ、果肉は「女峰」より硬いが、果皮は「とちおとめ」より軟らかいため、輸送性が低く、市場出荷には向かない品種となっています。

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 農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。

『-----

 果皮の色は濃赤、果実の光沢は良、果形は円錘、果実の大きさはかなり大、

 果肉色は鮮紅、果心の色は紅赤、可溶性固形分含量は高、酸度はやや低、

 果実の硬さはやや硬、無種子帯はほとんど無し、そう果の落ち込みは落ち込み中、そう果数及び果実の香りは中である。日持ちは中である

 季性は一季成、開花始期はやや早、成熟期は中、

 「女峰」と比較して、果皮の色が濃赤であること、果実が大きいこと、花柄長が短いこと等で、「とちおとめ」と比較して、果皮の色が濃赤であること、花柄長が短いこと、果実が軟らかいこと等で区別性が認められる。

-----』以上、抜粋。

◆実際に食べてみた「とちひめ」の食味

 今回入手した「とちひめ」は栃木県大田原市の(株)アサヒファームさんから送っていただいたものです。イチゴは一粒22~39gで、全体に赤く色付き艶やかでした。

 アサヒファームさんでの栽培の様子などをブログで紹介しています。

まぼろしのイチゴを求めて! ーいちご王国栃木紀行ー

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 食べてみると、なるほど、果肉は柔らかくとてもジューシーで、口の中に甘みが広がり、酸味は控えめではありますが甘さを引き立てるには十分な感じでした。いくつか計ってみた糖度は11~13度でした。

 香りもしっかりとあり、果肉の色も濃いめに色が付いていてイチゴミルクにしても良い感じに色が付きそうです。

 果皮がとても柔らかく繊細で、輸送性が高くないという事もよくわかりました。

●とちひめの主な産地と旬

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◆主な産地と生産量

 「とちひめ」は栃木県オリジナル品種として、県内でのみ栽培されています。また、果皮が軟らかく輸送性が低いため、用途は観光農園のいちご狩りや、産地での直売用となっており、通常市場出荷は行われていません。

 生産量は観光農園向けのため少なく、市場にも出回らないので、産地に行ってこそ味わえるイチゴとなっています。

◆とちひめの収穫時期と旬

 「とちひめ」の収穫は12月中旬頃から5月中旬頃までで、食べ頃の旬は2~4月にかけてとなります。

 イチゴは暖かくなってくると果実が柔らかくなり、輸送性が落ちてきます。もし、「とちひめ」を産直で取り寄せたいと考えるなら、まだ寒く果実に締りがある2月頃までに注文することをお勧めします。

品種 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
とちひめ                        

< 出 典 >

 ※ 「観光用いちご「とちひめ(栃木13号 」の育成 」栃木県農業試験場いちご研究所

 ※ 「イチゴ新品種「とちひめ」の育成」栃木県農業試験場研究報告 50号 p.27-37 2001年12月

 ※ 「いちご王国を支えてきた 品種開発50年」栃木県農業試験場いちご研究所 2020年11月

 ※ 「登録番号9512 とちひめ」 品種登録データベース 農林水産省ホームページ

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