伊予美人（愛媛農試V2号）：来歴や特徴と産地と旬

●伊予美人とは

　「伊予美人」は愛媛県が「女早生」をもとにカルス培養個体から選抜育成した、「女早生」なみに食味が良い上に、秀品率が高く収量も多い子芋、孫芋専用のオリジナルサトイモ品種です。

◆伊予美人の来歴

　愛媛県で里芋栽培は1940年代に鳥取県から導入された「女早生」が中心でしたが、この品種は「石川早生」に比べ肉色が白く、粘りが強く食味が良好でありながら、イモの形状が長くなりやすく秀品率が低かったことから、食味などの特徴はそのままに、より秀品率がや収量がいい品種を目的に改良がすすめられました。

　実は子・孫いも用のサトイモ品種の多くは開花・結実せず、交配による育成が難しい作物なのです。そこで県農業試験場は突然変異育種法の一つであるカルス化・再分化培養過程による変異を選択、「女早生」をもとにカルス由来の再分化個体から育成し、「伊予美人」が誕生しました。育成の過程は下記のとおりです。

1994（平成6）年　「女早生」の優良株を愛媛県四国中央市から収集し、新生いもの茎頂近傍組織をカルス培養し、個体を作出

1995（平成7）年　個体を圃場に定植し、種芋を育成

1996（平成8）年　78個体から孫いもの形と収量に着目して10系統を選抜

1997（平成9）年　5系統を選抜

1998（平成10）年　優良系統として「H7-062」を選抜

1999（平成11）年　特性の再確認と現地適応性試験を行実施

2000（平成12）年　優良な系統であることが確認でき、系統名を「サトイモ愛媛 1号」とする

2001～2003（平成15）年　品種登録のための予備調査を実施

2004（平成16）年　「愛媛農試V2号」として品種登録を出願

2006（平成18）年　ＪＡ全農えひめ（全国農業協同組合連合会 愛媛県本部）により「伊予美人」として商標登録を出願、翌年登録完了

2008（平成20）年　品種登録完了

　「伊予美人」という名称は、このイモが白くきめ細やかな肉質、丸々として形が揃っていることに因んでいます。

◆伊予美人の特徴

　「伊予美人」は子芋、孫芋専用品種で、葉柄は食用には向きません。

　子芋の形は短えびで、孫芋の形は丸くて大きく、いずれも沢山つき、「女早生」に比べ秀品率が高く収量も多いのが特徴です。

　イモの食味は粘りが強くて柔らかく、甘みがあり食味良好な里芋となっています。

　農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。

『-----

　芋の着生は分生、親芋の形は球である。

　子芋の形は短えび、数はやや多、孫芋の形は丸、大きさはかなり大、数は多、みの毛の多少はやや少である。

　早晩性は中である。葉柄の可食性は不適、芋の利用部位は子芋のみ、芋の肉質はかなり粘である。

　「女早生」と比較して、孫芋が大きいこと、孫芋の数が多いこと等で、「石川早生」と比較して、芋の着生が分生であること、孫芋が大きいこと等で区別性が認められる。

-----』以上、抜粋。

◆実際に食べてみた伊予美人の食味

　伊予美人は一般的な里芋と基本的には同じ食べ方で美味しく頂けます。今回はおでん種に使ってみました。

　煮ても崩れることなく、出汁も良く染みています。もちっとした食感でとても美味しいです。

　また、皮をむいてスライスしたものをチップスに揚げてみました。

　包丁の刃を立ててこするように表面の皮だけむけば、ぬめりはほとんどでず、指先が滑って持ちにくいということはありません。適温に油を加熱している鍋の上でスライス品がらスライスを揚げていきます。

　カラッと揚がったチップスにパラパラっと塩を振って食べてみると、ジャガイモのチップスとはまた食感が違い、旨味も強く感じます。

●伊予美人の主な産地と旬

◆主な産地と生産量

　伊予美人は愛媛県が育成したオリジナル品種で、栽培は愛媛県内に限定されています。

　2023年の伊予美人の収穫量は、５１００トンほどで、主に関西に出荷されているそうです。

◆伊予美人の収穫時期と旬

　伊予美人の収穫は9月から始まり、12月頃までですが、収穫後貯蔵される分もあり、翌春の４月頃まで出荷は続きます。

品種	1月	2月	3月	4月	5月	6月	7月	8月	9月	10月	11月	12月
伊予美人

●伊予美人の写真ギャラリー

　伊予美人のイモの形や質感などが分かりやすいよう、様々な角度から撮影しています。また、煮た状態やチップスにした状態がわかるよう調理したものも撮っています。

撮影機材：　CANON EOS R5 , RF28-70mm F2 L USM, RF100mm F2.8 L MACRO IS USM

ロゴなし元画像サイズ：約4500万画素　8192X5464pix 72dpi RAWデータあり

　各画像をクリックしていただければ拡大画像がご覧いただけます。

＜ 出 典 ＞

※　「サトイモ新品種‘愛媛農試V 2号'の育成とその特性」愛媛県農林水産研究報告第 7号 2015年 　愛媛県

※　「四国中央市で里芋「伊予美人」の収穫始まる」愛媛 NEWS WEB　NHK

※　「登録番号16024 愛媛農試V2号」農林水産省品種登録データベース

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