●興津早生とは

 「興津早生(おきつわせ)」は園芸試験場興津支場が選抜育成した「宮川早生」の珠心胚実生で、「宮川早生」に次いで広く栽培されている品種です。

◆興津早生の来歴

「興津早生(おきつわせ)」は農林省園芸試験場興津支場において1940(昭和15)年に「宮川早生」に「カラタチ」の花粉を交配し、得られた種子から無性胚を育成した早生種の温州みかんです。育成の過程は下記の通り。

1940(昭和15)年 農林省園芸試験場興津支場において「宮川早生」に「カラタチ」の花粉を交配。得られた種子から無性胚を養成。

1944(昭和19)年 実生から採穂し、系統名「127号」としてカラタチ台普通温州に高接。

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1947(昭和22)年 初結果。一次選抜。

1949(昭和24)年 静岡県内数か所にて、高接による調査を開始。

1953(昭和28)年 全国22箇所の試験場において適応性試験開始。

1956(昭和31)年 系統名を「127号」から「興津2号」とする。

1963(昭和38)年 「興津早生」と命名され、「みかん農林1号」として農林登録された。

この時点ではまだ種苗法による品種登録制度がなく、品種登録はされていません。2022年現在でも「興津早生」は温州みかん全体の中で「宮川早生」に次いで2番目に広く栽培されている品種となっています。

◆興津早生の特徴

 「興津早生」の果実は「宮川早生」よりも扁平で、果皮色は熟すと橙色で果面はなめらかで美しい。

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 果皮は比較的薄く、ジョウノウ膜もそのまま食べることができます。
果汁中の可溶性固形物(糖度)は「宮川早生」よりも明らかに多く、「美保早生」よりもさらに多い。また、クエン酸は「宮川早生」とあまり変わらず濃厚な風味となっています。

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◆実際に食べてみた興津早生の食味

 「興津早生」は品種名を表示して販売されていることがあまりなく、一般的にはほとんど意識せずに食べていると思います。温州ミカンの中でも2番目に多く作られていることもあり、一般に売られている普通の温州みかんというイメージで、取り立てて目につく特徴は感じません。

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 また、温州みかんは気候や生産者、栽培環境などによっても状態にばらつきが出やすく、本種のように広く各地で栽培されていると糖度が高く味が濃い物からボケた味で水っぽいものまで食味にもかなりの幅が出てくるので、「興津早生」とはこういう味わいですよという事は言いがたいものです。
 水分調整などがしっかりとなされ、良い状態で作られたものは果皮に艶と張りがあり、ジョウノウ膜が薄く甘味と酸味のバランスがとれた美味しいみかんとなっています。

●興津早生(おきつわせ)の主な産地と旬

◆主な産地と生産量

 「興津早生」は全国各地のミカン産地で作られてています。令和元年産特産果樹生産動態等調査で見ると、全国の栽培面積は3723haとなっており、温州みかん全体の12.3%を占め、「宮川早生」の22%に次いで2番目に広く栽培されています。

興津早生(おきつわせ)の全国の栽培面積

 主な産地は熊本県で、次いで和歌山県、広島県となっており、この上位3県で全国の約半分を占めています。主に西日本が占めていますが、静岡県は4番目に多く、少ないですが千葉県や神奈川県でも作られています。

◆興津早生の収穫時期と旬

 「興津早生」の成熟熟期は10月下旬~11月上旬となっています。収穫時期は産地によって多少ずれがあり、早い所では10月中旬頃から始まるようですが、市場に沢山出回る旬は11月上旬から中旬にかけてです。

品種 9月 10月 11月 12月
興津早生                        

< 出 典 >

 ※ 「カンキツ新品種「興津早生」と「三保早生」について」農林省園芸試験場報告 6号,p.83-93(1966-12)

 ※ 「興津早生」果樹茶育成品種紹介 農研機構

 ※ 「整理番号 48001 興津早生 みかん農林1号」 農林水産省 農林認定品種データベース

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