新秋(しんしゅう):来歴や特徴と産地や旬

新秋(しんしゅう)柿

●新秋柿とは

 「新秋」は農林水産省果樹試験場が「興津20号」と「興津1号」との交配から選抜育成した果実の大きさが240g程、果形が腰高の扁円形で甘味が多く、10月中下旬に成熟するやや早生でハウス栽培向けの完全甘柿です。

◆新秋の来歴

 「新秋」は農林水産省果樹試験場が興津支場において1968年から1978年にかけ76交配組み合わせ、1156個の交雑実生から選抜育成された完全甘柿品種です。また、交配親に使われた品種は1938年に交配され、そこから育成された系統なので、この品種が生み出されるまでには50年以上、およそ半世紀もかけられたことになります。育成の過程は下記の通り。

1938年 果樹試験場興津支場においてカキの育種試験が始まり、「袋御所」と「花御所」を交配し、得られた実生から「興津20号」を選抜育成、同じく興津支場において「晩御所」同士の交配から得られた実生から「興津1号」を選抜育成。

1950年 カキ第一回系統適応性検定試験に両系統を供試。結果、品種登録には至らなかったが、中間母体として優良品種とされた。

1968年、カキ第3次育種試験が開始。

1971年 果樹試験場安芸津支場において「興津20号」に「興津1号」を交配。得られた実生を育成。

新秋(しんしゅう)柿

1976年 実生を富有中間台に高接ぎ。

1978年 初結実。

1981年 一次選抜。

1983年 系統名を「カキ安芸津1号」とし、第3回系統適応性検定試験に供試。

1990年 農林水産省育成農作物新品種命名登録規程に基づいて「新秋」と命名され、「かき農林3号」として農林登録され、種苗法に基づき登録出願。

1991年 品種登録完了。

◆新秋の特徴

 「新秋」柿の果実は果重250g 程で、やや腰高なふっくらとした扁円形です。完全甘柿で種子ができてもゴマが入らず、果肉は綺麗な橙色をしています。糖度は赤道部で17~18%程度となっています。果頂部と果底部の熟度差が大きく、果頂部の糖度は20%程度になるようです。 完熟すると果汁が多くなるため、食味が非常に良い柿となっています。

新秋(しんしゅう)柿

 栽培面においては落果が少なく豊産性の品種ですが、秋季の雨に弱く、雨による汚損果が生じると汚損部から軟熟しやすい欠点があり、理事栽培には向いておらず、ハウス栽培向けの品種となっています。

新秋(しんしゅう)柿の断面

 農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。

『-----

 果実の形はやや扁円、縦断面の形は扁円、果頂部の形は平、横断面の形は円、果実の斜線溝、側溝及び蒂部の皺は無、

 果皮の亀甲紋の不明瞭、果粉の多少は少、蒂窪平面の形は正円形、側面の形は凹Uである。

 果心の形は中央細、果実の大きさは大(240g程度)、果皮の色は黄橙、果実の座は無、条紋の発生程度は少、

 蒂の全形は基太肩平幅広、大きさはやや小、果実に対する姿勢は斜向である。

 果肉の色は橙、褐斑は無、肉質は密、甘味は多(糖度17~18度程度)である。

 種子数は3~4、結果の多少は多、隔年結果性は小、成熟期はやや早、育成地において「伊豆」より1週間程度遅く「松本早生富度有」より2週間程度早く10月中下旬である。

 甘渋性は完全甘、生理落果の多少は少、果頂裂果性はかなり少、蒂隙性は少である。

 「伊豆」と比較して、果実の大きさが大きいこと、果皮の色が黄橙であること、甘味が多いこと、結果が多いこと等で、「松本早生富有」と比較して、果実の斜線溝が無であること、果粉が少ないこと、果皮の色が黄橙であること、褐斑が無いこと、甘味が多いこと等で区別性が認められる。

-----』以上、抜粋。

◆実際に食べてみた新秋の食味

 撮影試食した「新秋」は京都府産の露地栽培ものです。

新秋(しんしゅう)柿の断面

 大きさは中くらいで、果皮の色はヘタ近くに薄く緑が残っていて果頂部にいくほど色が濃くなっています。種子はほとんどなく、食べてみると果肉は緻密で硬すぎず歯触りがとてもいいです。強い甘みが広がり、渋みやエグミもなくこの時期の柿としてはとても甘く感じました。

●新秋柿の主な産地と旬

◆主な産地と生産量

 「新秋」は露地栽培に向かないハウス向け品種という事もあり、全国的に生産者が少なく、令和元年産特産果樹生産動態等調査にも記録がありません。

 産地としては和歌山県が知られています。ハウス栽培という事から価格は一般的な柿に比べて高くなっています。

◆新秋の収穫時期と旬

 「新秋」の収穫時期は広島県安芸津において「伊豆」より1週間程度遅く「松本早生富度有」より2週間程度早く10月中下旬となっています。

 和歌山県のハウス(温室)物は9月初旬~9月末頃までとなっています。

新秋 8月 9月 10月 11月
露地                        
温室                        

< 出 典 >

 ※ 「カキの新品種‘新秋'」 農林水産省果樹試験場報告 19号,p.13-27(1991-01)

 ※ 「新秋(しんしゅう)」 果樹茶育成品種紹介 農研機構

 ※ 「登録番号2887 新秋」 農林水産省品種登録データベース

皆さんで是非このサイトを盛り立ててください。よろしくお願いします。