ハマトビウオ(浜飛魚):生態や特徴と産地や旬

ハマトビウオ,オオトビ,Cheilopogon pinnatibarbatus japonicus

●ハマトビウオの生態や特徴

◆ハマトビウオとは

分類:魚類 > 条鰭綱 > ダツ目 > トビウオ科 > Cypselurinae > Cheilopogon(ツクシトビウオ属) > Cheilopogon pinnatibarbatus(日本海洋データセンターより)

学名:Cheilopogon pinnatibarbatus japonicus (Franz, 1910)

和名:はまとびうお/浜飛魚

英名:Japanese giant flyingfish

別名:オオトビ(大飛び)、カクトビ(角飛び)、ハルトビ(春飛び)、コシナガ(腰長)

 「ハマトビウオ」はトビウオ科の中では世界最大級の大きさになる種で、世界の海域にいる”Cheilopogon pinnatibarbatus”のなかの、日本近海に分布する亜種とされている。ここではJAMSTECのBISMaLに基づき”Cheilopogon属”としているが、”Cypselurus(ハマトビウオ属)”とする文献もある。

 「ハマトビウオ」の幼魚には下顎に幅のあるヒレ状のヒゲがあり、種小名”pinnatibarbatus”の語源(ヒレのあるという意味の”pinnatus”+髭のあるという意味の”barbatus”)となっている。”japonicus”は日本近海に分布する亜種という意味。

 飛魚の中では最大種であることから、「オオトビ」とも呼ばれている他、胴の断面が角ばっていることから「カクトビ」、また、伊豆諸島周辺では2~5月に産卵のために大群で回遊してくるため「春トビ」と呼ばれている。

 大きい事もあり、刺身の他色々な料理に使え、飛魚の中では高値が付けられる。

◆ハマトビウオの生態

 「ハマトビウオ」は伊豆諸島から九州南岸にかけての太平洋におおく見られ、表層を遊泳しながらプランクトンを食べている。飛魚類が空中を滑空する理由は大きな捕食魚から逃げるためと考えられている。時には400mほども飛ぶことがあるという。

 こうして少しでも長時間水中から飛び出していることで敵から身を守るのだが、身を軽くする必要に適応しトビウオには胃らしい部分がなく直線的な短い消化器官しか持たない。

ハマトビウオ,オオトビ,Cheilopogon pinnatibarbatus japonicus

 「ハマトビウオ」の産卵期は冬~春にかけてで、九州南岸では12~2月頃、伊豆諸島周辺では2~5月にかけて産卵のために大群で回遊してくる。

 「日本産魚類検索全種の同定第三版」によると日本近海での分布は石狩湾・北海道太平洋沿岸(稀)、伊豆諸島、小笠原諸島、岩手県~九州南岸の太平洋沿岸、屋久島、九州西岸、奄美大島西方海域(幼魚)とされ、海外においては朝鮮半島西岸となっている。

◆ハマトビウオの特徴

 「ハマトビウオ」は全長50cmにもなる大型種(写真は44cm)で、断面が頭部は三角、胴は四角の縦に長い角棒のような形をしている。

 雄は41~44cmが多く、それに対し雌は47~50cmと雌の方が大きくなる傾向が強い。

ハマトビウオ,オオトビ,Cheilopogon pinnatibarbatus japonicus

 翼となる胸ビレは大きく、薄い暗色の半透明で15~17軟条からなり、上から2軟条(ただし第一軟条はきわめて痕跡的で見えにくい)が不分岐で、閉じると胸ビレ先端は臀ビレ基部を越える。

ハマトビウオ,オオトビ,Cheilopogon pinnatibarbatus japonicus
ハマトビウオの胸ビレ 上から2軟条(ただし第一軟条はきわめて痕跡的で見えにくい)が不分岐で

 似ている近縁種の「トビウオ」とは胸ビレの2軟条(ただし第一軟条はきわめて痕跡的で見えにくい)が不分岐なのに対し、「トビウオ」は3軟条(ただし第一軟条はきわめて痕跡的で見えにくい)が不分岐であること、側線鱗数が61~68(トビウオは52~57)と多いこと、また、背ビレ前方鱗数も40~47(トビウオは33~37)と明らかに多いことで区別できる。

 「ハマトビウオ」の幼魚は下顎に幅のあるヒレ状のヒゲがあり、背ビレは黒色で高く帆状になっている。また、体側には6~8本の横帯を持つのも特徴で、成長と共にヒゲは消失し横帯も無くなる。FishBaseに表示されている画像はこの幼魚の姿と思われる。

●ハマトビウオの主な産地と旬

ハマトビウオ,オオトビ,Cheilopogon pinnatibarbatus japonicus
鹿児島魚市場から㈱タカスイに送っていただいたオオトビ

◆ハマトビウオ主な産地と漁獲量

 「ハマトビウオ」の主な産地は鹿児島県の屋久島周辺から宮崎県にかけてと東京都の八丈島周辺。

◆ハマトビウオの漁獲時期と旬

 「ハマトビウオ」は季節回遊魚で、屋久島辺りでは11月ごろから獲れ始める。この早い時期から1月頃までは「大トビ」と呼ばれる雄が中心で、2月ごろから「特大トビ」と呼ばれる子持ちのメスが獲れだす。

 また、八丈島をはじめとする伊豆諸島では2月頃から獲れ始めていたものが近年漁獲量が減り3月頃からにずれ、4月に最盛期となっている。

旬のカレンダー
ハマトビウオ 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
鹿児島県                        
東京都                        

●トビウオ科の魚


< 出 典 >

 ※「日本産魚類全種の学名」中坊徹次・平嶋義宏著 東海大出版部 

 ※「日本産魚類検索全種の同定第三版」中坊徹次編 東海大出版会

 ※「食材魚貝大百科」平凡社

 ※「旬の食材- 夏の食材」 -講談社

 ※FishBase Cheilopogon pinnatibarbatus japonicus

 ※「熊毛海域のハマトビウオについて 」鹿児島県水産技術開発センター うしお(第321号 平成21年5月)

 ※東京都島しょ農林水産総合センターホームページ 八丈島事業所トピック


 
 

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