ミノエビ(蓑蝦):生態や特徴と産地や旬

ミノエビ(蓑蝦)- Heterocarpus hayashii -

●ミノエビの生態や特徴

◆ミノエビとは

分類:ホンエビ上目 > 十脚目 > 抱卵亜目 > コエビ下目 > タラバエビ上科 > タラバエビ科 > ミノエビ属(BISMaLより)

学名:Heterocarpus hayashii Crosnier, 1988

和名:みのえび/蓑蝦

 ミノエビは甘海老(ホッコクアカエビ)やボタンエビ(トヤマエビ)などと同じタラバエビ科に分類される小エビだが、タラバエビ属とは別のミノエビ属に含まれる。

 底引き網漁で他の魚介類に混じって混獲される深海に棲むエビの一種なのだが、数がまとまらないことや可食部が少ないことなどから市場に出荷されることはほとんどなく、産地で消費されてきたエビの一つで、価格も安い。しかし、味は結構いける。

ミノエビ(蓑蝦)- Heterocarpus hayashii -

 このエビ、見た目に特徴があり他のエビ類に混じっていてもすぐに見つけることができる。頭胸甲は兜をかぶっているようにも見えるが、腹節の甲羅が大きく腹の下方まで下がっている様子は名前の通り、蓑(みの)を被っているように見える。

◆ミノエビの生態

 ミノエビは水深300~500mの海底に生息し、千葉県から鹿児島県にかけての太平洋沿岸の沖合に分布する。海外においてもジャワ海・バンダ海に分布する。

 「原色日本大型甲殻類図鑑(Ⅰ)」によると土佐湾での抱卵期は10月とあるが、今回5月に入手した駿河湾産のものは抱卵している状態だった。

◆ミノエビの特徴

 ミノエビは体長11cmほどになる小エビで、殻はやや硬く、全面に粗い毛が生えている。

 腹部の第1~第4節の背隆起は鋭く、第3、第4節の背は後方に向け大きな棘となっている。

ミノエビ(蓑蝦)- Heterocarpus hayashii -

 額角は先端がやや上方に反り、上縁に16~18歯、下縁に10~11歯がある。

 頭胸甲は半透明で比較的短くずんぐりとしており、側面には蝕角の付け根上下から伸びる2条の縦走隆起とその上下に書く1条の合計4条の縦走隆起がある。

ミノエビ(蓑蝦)- Heterocarpus hayashii -

 抱卵しているものの卵(外子)は透明感のある灰青色で、内子は頭胸甲の頭頂部にあり同じ色をしている。

◆ミノエビの調理のポイント

 ミノエビは殻がやや硬く、揚げても殻ごとは食べにくい。頭胸甲の中にも可食部はあるが、全体に殻の大きさに対して可食部は少ない。

 鮮度が良い物は生食も美味しく、加熱調理しても身は硬くなりにくい。

●ミノエビの美味しい食べ方と料理

◆ミノエビの刺身

 漁獲後冷凍されたものを取り寄せ、刺身にしてみた。鮮度は良く、身の食感はサルエビよりトロっとしているが甘海老よりは硬くプリッとしていて、甘味もあり結構美味しい。

ミノエビ(蓑蝦)の刺身

 頭に詰まっているミソもコクがあって美味しい。

◆ミノエビの塩茹で

 ミノエビを殻ごとクールブイヨンでポシェしたもの。

茹でたミノエビ(蓑蝦)

 身はしっとりとした食感で臭みもなく上品な味わいです。外子がたっぷり抱いていたので殻付きのまま撮りましたが、殻をむくと身の部分は結構スリムです。

◆ミノエビ・ヒゲナガエビ・ベニガラエビのトマトクリームソース リングイネ

ミノエビとベニガラエビのトマトクリームソース・リングイネ

 ヒゲナガエビとベニガラエビの頭と殻をニンニクと共にオリーブ油でよく炒め、香ばしい香りが立ってきたらブランデーを振ってフランベし、白ワインを注いで煮る。

 十分にに詰めたら生クリームを加えて少し煮込んでエビの出汁をしっかりと引き出す。

 これを濾しておく(エビのクリームソース)。

 フライパンで刻んだニンニクとともにエビの身の部分をサッと炒め、火が通ったら一旦取り出し、そのフライパンにホールトマトの缶詰を潰して加え、軽く煮詰める。

 濾しておいたエビのクリームソースを加え、茹で上がったリングイネを加えてソースを馴染ませるように混ぜ合わせ、そこに先のエビの身を加えまぜる。

 塩胡椒で味を整え、皿に盛り付ける。茹でておいたキヌサヤとソラマメをトッピングする。

●ミノエビの主な産地と旬

ミノエビ(蓑蝦)- Heterocarpus hayashii -

◆主な産地と漁獲量

 ミノエビはこれを目的とした漁はなく、底引き網で混獲されるにすぎない。

 主な産地は駿河湾周辺から高知県、宮崎県、鹿児島県辺りにかけての沿岸で沖合底引き網漁が行われているところ。

 ただ、鮮度的には漁場があまり離れていない駿河湾に面した静岡県が良いのかもしれない。

◆ミノエビの漁獲時期と旬

 旬の時期は不明。

旬のカレンダー 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
ミノエビ                        

< 出 典 >

 ※「原色日本大型甲殻類図鑑(Ⅰ)」三宅貞祥著 保育社 p.65 

 ※「食材魚貝大百科①」平凡社 p.016

 ※「旬の食材- 冬の食材」 -講談社 p.94

 ※Heterocarpus hayashii Crosnier, 1988 World Register of Marine Species

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