シライトマキバイ/灯台つぶ

シライトマキバイ/灯台つぶ

●シライトマキバイ/灯台つぶの生態や特徴

◆シライトマキバイ/灯台つぶとは

分類:軟体動物門 > 腹足綱 > 直腹足亜綱 > 新生腹足上目 > 吸腔目 > Hypsogastropoda > 新腹足下目 > Buccinoidea > エゾバイ科 > エゾバイ属(BISMaLより)

学名:Buccinum isaotakii Kira, 1959

和名:しらいとまきばい/白糸巻貝

別名:トウダイツブ(灯台つぶ)、マキツブ(巻つぶ)

 シライトマキバイはエッチュウバイ(白ばい)などと同じエゾバイ科エゾバイ属に分類される巻貝で、通称「トウダイツブ(灯台つぶ)」と呼ばれている。

 「灯台つぶ」と呼ばれてはいるが、一般につぶ貝と呼ばれるエゾボラなどエゾボラ属の貝が唾液腺に有毒なテトラミンを含むのに対し、本種には含まれていないのでそのまま食べることができる。やや大粒で可食部もしっかりとある。殻が薄く割れやすいため、底引き網で大量に獲れるものは殻が割れているものも多いこともあって、ボイルしてむき身にした状態で冷凍されたものが「灯台つぶ」として流通している。

シライトマキバイ/灯台つぶ

 食感や味は結構よく、それでいて価格はエゾボラ(マツブ)などに比べとてもやすいのでコストパフォーマンスに優れた貝である。

◆シライトマキバイ/灯台つぶの生態

 シライトマキバイは水深50~300mの海底に生息し、魚や貝類などの死肉を好んで食べ、日本近海での分布は鹿島灘から北海道にかけての太平洋沿岸とされる。

シライトマキバイ/灯台つぶ

 産卵はほぼ年間通して見られるが最盛期は5~8月と考えられ、1回に数日かけて2,000~3,000個程度の卵の入った卵嚢を20~426個産卵する。

 同じエゾバイ属の中によく似たスルガバイがいるが、そちらは駿河湾から土佐湾にかけて分布し、生息域が分かれている。

◆シライトマキバイ/灯台つぶの特徴

 シライトマキバイは殻長12cmほどになるややスリムな巻貝で、一見厚みがありそうに見える殻は比較的薄く割れやすい。

 縫合はくびれ、各層に3~4本の太い螺肋と細い間肋がある。殻表は白色だが、赤褐色の火焔模様が模様がまばらにあり、その上に厚い黄褐色の殻皮を被る。

シライトマキバイ/灯台つぶ

 殻口は丸く、楕円形の薄い蓋をもつ。老成すると殻口外唇がやや厚くなりわずかに外反する。

 軟体部は白から淡色で、表皮にはエゾバイ科特有の霜降り状黒斑がしっかりと見られる。

●シライトマキバイ/灯台つぶの主な産地と旬

シライトマキバイ/灯台つぶ

◆主な産地と漁獲量

 シライトマキバイは三陸地方などの底引き網でまとまって漁獲されるほか、籠漁でも漁獲される。底引き網で獲れたものは殻が割れているものも多く、まとまって獲れることから、ボイルしたうえでむき身にされたものも市場に出荷されている。

 主な産地は三陸から北海道南部の沿岸。

◆シライトマキバイ/灯台つぶの漁獲時期と旬

 通年水揚げはあるようだが、漁獲量が増えるのは春から夏にかけて。

 生息する200~300mの水温が年間通して大きく変わらないことや産卵期が個体によってばらつくことなどから、季節による身質の変動はほとんどないようだ。

 これらの事から、旬の時期は沢山出回る春から夏にかけてと言えそうだ。

旬のカレンダー 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
シライトマキバイ/灯台つぶ                        

●シライトマキバイ/灯台つぶの目利きと調理のポイント

  

シライトマキバイ/灯台つぶ

◆選ぶ時のポイント

 殻付きのものは殻が割れておらず綺麗なものがいい。いくつも殻が割れているものは底引き網で獲れたもので、ダメージが大きく生け簀でも長生きしないものが多い。

 軟体部を触った時に顕著に反応する活きが良い物を選ぶ。また、軟体部が殻の奥まで引っ込んでいるものは取り出しにくく、また身も小さい傾向があるので避けよう。

 持った時に重く感じるものが身詰まりが良い。

シライトマキバイ/灯台つぶ

◆調理のポイント

 シライトマキバイ(灯台つぶ)は殻が薄く割れやすい。という事は、殻を割って身が取り出しやすいという良い面と、マツブのように穴を開けて殻を割らずに身を引き出そうとすると殻が割れてしまいやすい。

殻から取り出したシライトマキバイ/灯台つぶの身

 シライトマキバイは唾液腺に有毒なテトラミンを含まないので、開いて唾液腺を取り除かなくてもそのまま食べることができる。また、筋肉部分の割合に対してワタの部分が比較的小さく、食べ応えがある。

 軟体部は加熱調理しても硬くなりにくい。

●シライトマキバイ/灯台つぶの美味しい食べ方と料理

◆シライトマキバイ/灯台つぶの刺身

 大きめのシライトマキバイ/灯台つぶを刺身にしたもの。ウロ(中腸線)の部分はさっと塩ゆでして添えています。

シライトマキバイ/灯台つぶの刺身

 身の部分はエゾボラより若干柔らかく、コリコリというよりもシコシコといった食感でサザエのような磯の風味はありませんが、甘味がありとても美味しい。ウロはもちっとしていてコクがあります。苦みはほとんど感じませんでした。

◆シライトマキバイ/灯台つぶの煮貝

 今回のシライトマキバイ/灯台つぶは煮るには少し大きくもったいない気もしましたが、酒、醤油、みりん、砂糖で煮てみました。

シライトマキバイ/灯台つぶの煮貝

 この手の貝を煮る時は、貝を鍋に入れ、貝が浸る程度の水を張り、そこに醤油や作用などの調味料を加えて火にかけます。水の代わりに出汁を使うと一層美味しく仕上がりますが、水でも十分美味しいです。

 シライトマキバイは殻ごと煮たのですが、煮あがった時には串などでは届かない殻の奥に引っ込んでしまい、殻を割らないと取り出せないものが多かったです。写真は何とか頑張って引っ張り出せたものだけを盛り付けています。

 これだけ奥に引っ込んでしまうという事は、身が硬く縮んでしまったのかも・・・と思いきや、食べてみると全然そんなことは無く、シコシコの食感で甘く、苦みや渋みといった嫌なクセや臭みがなくとても美味しいです。

◆シライトマキバイ/灯台つぶの串焼き

 生のシライトマキバイの殻を割り、身を取り出して、ワタも取り除いて身の部分だけを串にさして塩焼きにしたもの。

シライトマキバイ/灯台つぶの串焼き

 貝が焼けた香ばしい香りと、食感は表面がカリッと、中はむっちりシコシコで、甘味が凝縮された感じ。日本酒が進んでしまいます。

◆シライトマキバイ/灯台つぶの炒め物

 シライトマキバイはむき身でも手に入るので、いろいろな炒め物などにも使いやすいです。

 貝類でよく作るエスカルゴ風もお勧め。作り方はニンニクのみじん切りとともにバターで炒め、仕上げにパセリのみじん切りを加える方法と、むき身のシライトマキバイをココットなどに詰め、あらかじめみじん切りにしたパセリとニンニクをバターと練り混ぜておいたエスカルゴバターをのせてオーブンで焼き上げる方法があります。

◆シライトマキバイ/灯台つぶを使った料理をレシピサイトで探す

 主な料理レシピサイトのシライトマキバイ/灯台つぶを使ったレシピのページにリンクしています。参考にされると良いでしょう。

クックパッド レシピブログ 楽天レシピ

< 出典および参考資料 >

 ※「日本近海産貝類図鑑 第二版」奥谷喬司編著 東海大出版会 p.266/p.933

 ※「食材魚貝大百科②」平凡社 p.024

 ※「シライトマキバイ(Buccinum isaotakii KIRA)の生殖生態について」茨城県水産試験場研究報告 40号-6 2006

 ※「シライトマキバイ親貝の成熟及び産卵について」福島県水産種苗研究所事業報告書 平成13~14年度

 ※「北海道噴火湾に生息するシライトマキバイの生殖と成長、摂餌に関する生態学的研究」学位論文 )Anthony Soria Ilano 2003

 ※ Buccinum isaotakii Kira, 1959 WoRMS

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