シラウオ(白魚):生態や特徴と産地や旬

シラウオ(白魚) しらうお

●シラウオの生態や特徴

◆シラウオとは

分類:魚類 > 条鰭綱 > キュウリウオ目 > シラウオ科 > シラウオ属(日本海洋データセンターより)

学名:Salangichthys microdon (Bleeker, 1860)

和名:しらうお/白魚

英名:Japanese icefish

別名:アマサギ、メンゴリ、スベリ

 「シラウオ」はキュウリウオ目シラウオ科の小魚で、河口付近や汽水域で四手網を使って獲られる。体長5~10cmで、細くとがった魚体は、新鮮であればあるほど透き通っていて美しく、死後時間の経過と共に白っぽくなる様子から「白魚/しらうお」と呼ばれるようになった。

 シラウオ科には同じシラウオ属のイシカワシラウオ(Salangichthys ishikawae)、ヒメシラウオ属のアリアケヒメシラウオ(Neosalanx reganius)、アリアケシラウオ属のアリアケシラウオ(Salanx ariakensis)の3属4種がいて、いずれも同じように食用となってきた。

 本種の学名”microdon”は『小さい歯(の)』という意味のギリシャ語に因む。

◆シラウオ(白魚)とシロウオ(素魚)

 同じ時期に旬を迎える似たような小魚の「シロウオ(素魚)」と混同されやすいが、「シラウオ」は背びれと尾ひれの間に脂ひれがあり頭が尖っているのに対し、「シロウオ(素魚)」はハゼ科で頭が丸く全体に黄色味を帯びているので、名前では紛らわしいが見れば一目瞭然である。

シラウオ(白魚) しらうお

 その昔、江戸時代には徳川将軍がことのほかシラウオを気に入り、冬から春の間、佃島と京橋小網の漁師にシラウオ漁に専念させるため様々な特権を与え、シラウオを献上させていたという。この慣例は江戸時代の間ずっと続き、およそ260年間も続いたという。当時は隅田川や江戸川などでもシラウオが獲れていたことがうかがえる。

◆シラウオの生態

 シラウオは日本の温帯沿岸域やサハリン、朝鮮半島などに分布し、河川の河口域から内湾の沿岸域、汽水湖に生息し動物プランクトンを食べている。産卵期は2~5月で地方によって多少時期がずれる。この時期になると産卵のため河川を遡上する。

 「日本産魚類検索全種の同定第三版」によると日本近海での分布は北海道~岡山県・熊本県とされ、海外では朝鮮半島東岸~沿海州、サハリンに分布するとなっています。

◆シラウオの寄生虫

 シラウオは鮨ネタにも使われるなど生食することが多いのだが、実は自生中のリスクがあることはあまり知られていない。特に淡水域で獲れたものには、まれに線虫の一種である顎口虫をもっており、これを生食すると幼虫が皮下組織に移動し「顎口虫症」を発症し、皮膚にかゆみや腫れの症状が出るほか、まれに目や脳神経に移動して失明や麻痺などになる事もあるという。

 また、同じく淡水域では横川吸虫のリスクもある。こちらは生食によりヒトの体内に入ると小腸粘膜に寄生する。そうなると「横川吸虫症」を発症し、腹痛や下痢などの症状が現れる。ただ、大量に接種しなければ発症せず自然消滅することが多いそうだ。

◆シラウオの特徴

 「シラウオ」の姿はアユなどのシラス幼生期に似ているが。これは幼形成熟とよばれる現象で、キュウリウオ近縁の祖先が進化の過程で幼生期の姿のまま成熟したのだと考えられている。

 標準体長は10cmほどになるが、「シラウオ」はほぼ通年、小さいうちから食用として獲られているので、時期によっては5cmほどのものもみられる。次の写真は福井県の三方五湖で2月下旬に獲られたもので全長7cm程だった。

シラウオ(白魚) しらうお

 「シラウオ」は身体が小さく色も半透明で細かい部位の特徴が分かりにくいが、背ビレは身体の中心よりも後方に位置し11~15軟条からなる。背ビレ基部後端と尾ビレ付け根の中間あたりに小さな脂ビレがある。

 臀ビレは24~29軟条で、近縁種のイシカワシラウオとは尾柄部の上端と下端に黒点があるイシカワシラウオに対し、シラウオにはないこと、雄の臀ビレ鱗数がシラウオが16~18なのに対しイシカワシラウオは23~29と多いことで区別できる。また、イシカワシラウオは太平洋沿岸の外海にしか生息せず汽水域には入ってこないので、生息域にも違いがある。

●シラウオの主な産地と旬

シラウオ(白魚) しらうお
 写真は福井県の三方五湖で獲られたもの。

◆主な産地と漁獲量

 「シラウオ」は北海道から九州沿岸まで各地で漁獲されている。産地として知られるのは島根県の宍道湖で、「宍道湖七珍」のひとつとされている。また、茨城県の霞ケ浦なども有名。

シラウオの主な産地と漁獲量

 農林水産省がまとめている内水面漁業生産統計調査によると、最も多く漁獲しているのは青森県で、全国の約半分を占めている。次いで霞ヶ浦のある茨城県、そして宍道湖のある島根県、秋田県となっている。その他の地域でも漁獲はされているようだが、量が少なく統計には記録されていない。

「シラウオ」はかつて河川が注ぐ内湾や汽水湖では普通にみられる魚であったようだが、造成や埋め立てなど沿岸や河川環境の変化で今では姿を消してしまったところも多く、全国的に漁獲量はとても少なくなってきている。

◆シラウオの漁獲時期と旬

 「シラウオ」はほぼ通年漁獲されているようだが、多くの産地で「シラウオ」が産卵のために河川を遡上する春の2~4月が盛漁期となっている。宍道湖では11月中旬に解禁され3月がヤマ場とされている。

 こういったことから、「シラウオ」の旬は2~4月の春が旬と言える。

旬のカレンダー
旬のカレンダー 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
シラウオ                        

< 出 典 >

 ※ 「日本産魚類全種の学名」中坊徹次・平嶋義宏著 東海大出版部 

 ※ 「日本産魚類検索全種の同定第三版」中坊徹次編 東海大出版会

 ※ 「食材魚貝大百科」平凡社

 ※ 内水面漁業生産統計調査 農林水産省

 ※ 「Salangichthys-microdon」FishBase

 ※ 「皮下を幼虫がはう「顎口虫症」青森県で初確認 約130人に症状 多くはシラウオ加熱せず食べる」青森テレビ 11/29(火) 16:54

 


 
 

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