真珠姫（しんじゅひめ）：来歴や特徴と産地や旬

●真珠姫（しんじゅひめ）とは

◆真珠姫の来歴

　「真珠姫」は「パールホワイト」と同じく奈良県のイチゴ生産者でもある前田光樹氏が交配育成した白いイチゴ品種で、２０１７（平成２９）年に登録出願、翌２０１８年に公表されていますが、２０２２年5月の時点ではまだ登録は完了していません。

　「真珠姫」という名称は前田氏を含め5軒の生産者が立ち上げた「奈良いちごラボ」の代表を務める杉崎保巳氏によって取得された登録商標で、正式な品種名は「パールホワイト」＝「イロハ-001」に続き「イロハ-002」となっています。

　交配親など、育成の詳細な過程は公開されていませんが、前田氏の話では香りに特徴があることで知られる「桃薫」と、ある品種の変異株を交配させたという事でした。

　前田氏に話を伺った際の動画はこちら　→

◆北海道で作られている「ゆきぼたん」

　イチゴは主に冬から春に収穫される一季なりイチゴと呼ばれる品種群と、四季を通して収穫できる四季なりイチゴと呼ばれる品種群があり、夏にわずかに出回る国産のイチゴは四季なりイチゴの類になります。ただ、食味の点では一季なりのイチゴに及ばないのが現実で、夏には輸入いちごが多く流通します。

　この一季なりイチゴを北海道の中標津町で夏を含む周年収穫できるように立ち上げられたのが株式会社シンクリッチなのですが、前田氏はこの事業の顧問として白いちご品種「パールホワイト」と「ゆきぼたん」を提供されています。実は「ゆきぼたん」は商品名で、使われている品種は「真珠姫」と同じ「イロハ-002」なのです。

◆真珠姫の特徴

　「真珠姫」のイチゴは肩の部分がややふっくらとした丸みのある形のものが多く、果皮の色は全体に白色で、そう果（種子に見える粒）も赤く着色しやすい「パールホワイトに比べ、あまり着色しないのが特徴です。

　中の果肉も白く、半分に切ってみると、果芯部には少し空洞ができやすいようです。

　果肉は比較的柔らかく、一般的なイチゴや他の白いちごとは違ったトロピカルないい香りがします。これは交配親に用いられた「桃薫」から受け継がれた特性なのでしょう。

　「真珠姫」を「淡雪」「コットンベリー」と並べてみました。白から淡いピンクまでのグラデーションが綺麗です。

◆実際に食べてみた真珠姫の食味

　撮影、試食した「真珠姫」は2022年4月中旬と5月上旬に奈良県橿原市にある直売所まほろばキッチンで購入した、「奈良いちごラボ」の一員である東 健司氏によるものと、5月11日にこの品種の生みの親である前田氏の圃場を訪問し頂いたものです。

　いちごはまさに真珠のように艶があり、そう果の色や果形などの違いから「パールホワイト」と混ぜた状態でもより分けられる感じがします。
　食べると優しい食感と共に何とも言えない良い香りが広がり極上のひと時。親の「桃薫」には桃やココナツの香りと似た成分が含まれているとされますが、この「真珠姫」にも受け継がれているのでしょう。

　甘味自体は一般的な赤いいちごの普通品と同じくらいで、特別甘い訳ではありませんが、『白いちごは美味しくない』と思っている人は食べるときっと驚くのではないでしょうか。

●真珠姫の主な産地と旬

◆主な産地と生産量

　「真珠姫」は奈良県のイチゴ生産者集団、奈良いちごラボの登録商標で、奈良県内でも品質にこだわる5軒の生産者によってのみ栽培出荷されているので希少性も高く高級いちごとなっています。

　産地の直売所の他、関東をはじめ名古屋や大阪など大きな都市の百貨店などで販売されています。

　また、北海道中標津町では「ゆきぼたん」という商品名で出荷されています。

◆真珠姫の収穫時期と旬

　「真珠姫」は一季なりイチゴで、収穫の盛期は一般的なイチゴと同じように12月から4月ごろにかけてです。

　また、北海道の株式会社シンクリッチは問い合わせたところ、５～6月に苗の差し替えなどで一時出荷は止まるものの、ほぼ通年出荷されるようです。ただ、まだ生産量が少ないこともあり、そのほとんどは東京や大阪の市場に出荷されているとのことです。

品種	1月	2月	3月	4月	5月	6月	7月	8月	9月	10月	11月	12月
真珠姫
ゆきぼたん

＜ 出　典 ＞

　※　前田光樹氏インタビュー　2022.5.11

　※　奈良いちごラボ　ホームページ

　※　「出願番号32388　イロハ-002」　農林水産省品種登録データベース